5月12日横浜市立大学金沢八景キャンパスでファイザー製ワクチンの有効性について調査をした結果、新型コロナ変異株に対するワクチン接種者の約9割が 流行中の変異株に対する中和抗体を保有することが明らかになりました。 学術院医学群 臨床統計学 山中 竹春 教授、同微生物学 梁 明秀 教授、 宮川 敬 准教授、附属病院 感染制御部 加藤 英明 部長らの研究チームは、現在接種が進められている新型コロナウイルスワクチンが、従来株のほか、様々な変異株に対しても中和抗体の産生を誘導し、液性免疫の観点から効果が期待できることを明らかにしました。
研究成果のポイント
日本人のワクチン接種者111名(未感染105名、既感染6名)を対象に、ファイザー製ワクチンの有効性について、中和抗体(液性免疫)の保有率という観点から調査した結果、独自の迅速抗体測定システム「hiVNT新型コロナ変異株パネル」を活用して、従来株および変異株7種の計8株に対する中和抗体を測定することができたようです。未感染者でワクチン2回接種した人のうち、99%の人が従来株に対して中和抗体を保有していた。流行中のN501Y変異を有する3つのウイルス株(英国、南アフリカ、ブラジルで初めて確認された株)に対しても、90~94%の人が中和抗体を有していたようです。また懸念されているインド由来の株に対しても中和抗体陽性率が低下するような傾向は見られなかったようです
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緊急シンポジウム
5月8日、新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、日本感染症学会などが、変異株に関する緊急シンポジウムを横浜市内で開催しました。その中で変異株は「全く別のウイルス」との見解で専門家は「従来株より感染力が強い全く別のウイルスと考えていい。ワクチンが十分行き渡るまでは強力な対策を取らざるを得ない」と訴えました。
世界各国で変異した新型コロナウイルスの感染が拡大しているなか、ワクチン接種が進められていますが果たしてこの変異株に対してワクチンは有効なのか、各メーカー事に調べた結果がNHKのサイトで公開されました。現在さまざまな研究機関が分析を進めています。
ファイザー製ワクチン
アメリカの製薬大手、ファイザーなどが開発したワクチンについて、ファイザーとビオンテックがテキサス大学とともに医学雑誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に発表した論文によりますと、ワクチンを接種した人の抗体を使った細胞レベルでの実験で▼イギリスやブラジルで見つかった変異ウイルスに対しては働きを抑える効果が従来のウイルスに対してとほぼ変わらなかったほか、▼南アフリカで見つかった変異ウイルスに対しては効果は低かったものの、十分だったとしています。
また、このワクチンの接種が進むイスラエルでの研究では、発症を防ぐ効果が94%、感染を防ぐ効果も92%だったなどとする論文が出されていて、分析の対象となった期間にイギリスで見つかった変異ウイルスが流行していたことから、この変異ウイルスに対する効果があることが示唆されるとしています。
さらにファイザーが2021年4月1日に発表したプレスリリースによりますと、南アフリカで行われた臨床試験では、参加した800人のうち、発症した9人はすべて偽薬=プラセボを投与された人だったということで発症を防ぐ効果は100%だったとした上で「南アフリカで流行している変異ウイルスに対して高い有効性が見られた」としています。
モデルナ製ワクチン
アメリカの製薬会社、モデルナも自社で開発したワクチンについて同様の実験を行っています。
それによりますと、会社などが「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に発表した論文によりますと、▼イギリスで見つかった変異ウイルスに対しては、効果に目立った変化はありませんでしたが、▼南アフリカで見つかった変異ウイルスに対しては、抗体の働きを示す値がおよそ6分の1に、▼ブラジルで見つかった変異ウイルスに対しては抗体の働きを示す値がおよそ3分の1になったということです。
ただ、会社ではいずれの変異ウイルスに対してもワクチンとして必要なレベルは上回っていたとしています。
モデルナは2021年3月10日、イギリスで見つかった変異ウイルスや南アフリカで見つかった変異ウイルスに対応したワクチンの候補を製造し、これまでのワクチンに加えて接種した場合に効果があるか確かめる臨床試験を始めたと発表しました。
アストラゼネカ製ワクチン
イギリスの製薬大手、アストラゼネカとオックスフォード大学が開発したワクチンについては、オックスフォード大学などのグループがイギリスで見つかった変異ウイルスに対しては変わらない効果がみられたという調査結果を公表しています。
南アフリカで見つかった変異ウイルスに対しては効果が確認できないとする報告が出ています。
オックスフォード大学などのグループが医学雑誌「ランセット」に発表した論文によりますと、アストラゼネカのワクチンの接種を2回受けた8534人のうち、2021年1月14日までに新型コロナウイルスに感染して症状が出た520人を分析した結果、ワクチンの有効性は▼従来のウイルスに対しては81.5%だったのに対し、▼イギリスで見つかった変異ウイルスに対しては70.4%だったとしています。
また、南アフリカの大学などのグループが「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に発表した論文によりますと、南アフリカで2021人を対象にした臨床試験では、ワクチンを接種したグループとしなかったグループで軽症から中等症の症状が出た人の数に差は見られず、南アフリカで見つかった変異ウイルスによる発症を防ぐ効果は10.4%で、効果は見られなかったとしています。
現時点では正確なデーターガ不足しています
いずれのワクチンも、変異ウイルスに対する効果は、実験室での実験や臨床試験だけでは分からないことも多く、WHO=世界保健機関はより多くのデータで詳しく分析する必要があるという認識を示しています。