12月1日にプエルトリコの受信装置の落下で壊れた巨大電波望遠鏡「アレシボ望遠鏡」が、上空約150メートルにつり下げていた約900トンの受信装置が落下する事故が起きたと発表しました。けが人はいませんでした。この望遠鏡は人気スパイ映画「007」シリーズの撮影でも使われていました。1963年から運用されてきたましが、最近は老朽化が目立ち、廃止することが決まっていたようです。
The instrument platform of the 305m telescope at Arecibo Observatory in Puerto Rico fell overnight. No injuries were reported. NSF is working with stakeholders to assess the situation. Our top priority is maintaining safety. NSF will release more details when they are confirmed. pic.twitter.com/Xjbb9hPUgD
— National Science Foundation (@NSF) 2020年12月1日
落下の瞬間映像
アレシボ天文台の望遠鏡が崩れ落ちていく映像
落下直後の映像
アレシボ望遠鏡は、地上に直径305メートルのパラボラアンテナがあり、その上空に約900トンの受信装置がつり下げられた構造です。地元メディアによると1日朝に受信装置が落下し、真下のアンテナを直撃したという発表がありました。原因はケーブルが切れた可能性があるとしています。これまでにもハリケーンや地震の被害を受け、今年8月にはアンテナの一部が損傷する事故が発生していましたが、安全性を検証したNSFは11月に望遠鏡の廃止を決めていました。
世界最大の電波望遠鏡
アレシボ望遠鏡は、2016年に中国が直径500メートルの電波望遠鏡「FAST」を造るまで単体としては世界最大の電波望遠鏡でした。水星の自転周期が約59日であることを特定するなど天文学の発展に貢献したほか、地球外知的生命体からの信号検出を試みる探査などにも使われてきました。
3つの鉄塔がすべて壊れた
NSFによると、プラットフォームの落下はそれを支える3つの鉄塔がすべて壊れたために起こったとようです。それらを支えるケーブルも落下しており、反射鏡へのダメージはさらに酷くなったようです。すでに施設周辺は安全の評価をする技術者の立ち入りは以外は禁止されており、けが人はありませんでした。
周辺への立ち入り禁止
NSFとアレシボ天文台を運営するセントラルフロリダ大学)は、事故の翌日から環境アセスメントのための人員を配置して、天文台の作業員は安全対策を講じるとしています。なお、電波天文学の研究に使われる12m望遠鏡や、地理空間研究に用いられるLIDAR施設といったハリケーン被害を受けた周辺施設の修理復旧作業は継続して行われているようです。NSFは今回の崩落の発生を「悲しく思う」と述べ「今後は科学界の支援とともにプエルトリコの方々との強固な関係を維持していくための方法を模索する」とコメントしています。